私が北極イワナの存在を知ったのはかなり昔で、小学生くらいの時だったような気がする。
何かの釣り番組か旅番組で誰かが北欧を旅しながらタラやサーモン、そして北極イワナを釣っていた映像を今でもかすかに覚えている。
釣りを趣味として続ける中で北極イワナについて意識することはなかったが、偶然フライフィッシングを始めて、トラウトを狙うようになった。
特に近年は北海道を年に何回も訪れ、小学生のころはエサ釣りでも釣れなかったイワナ(アメマス)をフライやルアーでたくさん釣ることができるようになった。
また、ある程度の資金が貯まり海外の釣りにも興味を持つようになっていた。
そして長期間の休暇を取得できる目処が立ち、一度きりの人生失敗しても良いから海外に釣りに行こうと考えた。
気候変動などで今いる魚がいつまでもいる保証もないのだ。
そんな時、北極イワナの存在を思い出したのである。
うろ覚えの北極イワナはお腹がオレンジでパーマークなどはない割と淡白なイメージだったのだが、調べてみると婚姻色が信じられないくらい美しい魚だった。
婚姻色のついた北極イワナ(以下、アークティックチャー)を釣ることが夢となった。
アークティックチャーは淡水のみで生活するタイプと、海に下って成長し遡上するタイプ(以下、シーラン型)に分かれ、もちろん釣りたいのは婚姻色が美しいシーラン型である。
シーラン型のアークティックチャーは主にカナダ北部、グリーンランドで釣ることができるようだった。
今回選択したのはグリーンランドだ。
グリーンランドは本当の意味で手付かずの自然がありアークティックチャーの魚影が濃く、特にシングルハンドに適した河川がロッジやキャンプによって提供されていた。
植村直己氏や角幡唯介氏などの探検の舞台でもあり、訪れるだけでワクワクできそうなのも良かった。
そして短い人生でグリーンランドに渡航し、釣りをするチャンスはなかなかないだろう。
もちろん日本人がほとんど行ってなさそうという少し捻くれた理由もあったのだが・・・。